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ブランド力を高めると何が変わるのか|顧客・採用・社内・投資家の4つの市場

日経クロストレンド 連載「仕事に役立つ知識の『書棚』」(2026年3月26日)にて、当社代表が寄稿しています。

ブランド力を高めたいという相談は、たいてい「売上を伸ばしたい」という文脈で始まります。しかしブランドの影響は顧客だけに及ぶものではありません。投資できる量が限られている以上、どの相手への効果を優先するかを先に決める必要があります。その選び方を整理します。


この記事の要点


  • ブランド戦略で最初に決めるのは、誰に対してどの効果を引き出すのかという点です。

  • 影響が及ぶ相手は顧客、採用、社内、投資家の4つの市場に整理できます。

  • 投資できる量には限りがあるため、4つを同時に最大化することはできません。

  • 優先順位は自社の経営課題から決めるため、企業によって答えが変わります。


こんな方におすすめ


  • ブランドへの投資を検討しているが、何を成果指標に置くべきか決まっていない方

  • ブランディングの支援会社を選ぶ段階で、比較の基準を持ちたい方

  • 社内で採用や離職の課題を抱えていて、ブランドとの関係を整理したい方


前提となる3つの用語


ブランディングとは


ブランディングとは、ある名前に対して特定の印象と期待を結びつけていく取り組みである。目的は認知を得ることではなく、思い出されたときに選ばれる状態をつくることにある。対象となる相手は顧客に限らず、採用候補者、社員、投資家にも及ぶ。


ステークホルダーとは


ステークホルダーとは、企業の活動に関わり、影響を与えたり受けたりする関係者のことである。顧客、従業員、株主や投資家、取引先、地域社会などが含まれる。ブランド戦略ではこのうちどの相手を優先するかを決めることが出発点になる。


コーポレートアイデンティティとは


コーポレートアイデンティティとは、企業の独自性や理念を、名前、ロゴ、デザイン、言葉として表現したものである。CIと略される。制定には意味があるが、市場での競争力に対する即効性は期待しにくい。長期にわたって企業のあり方に影響を与える性質のものである。


論点の背景


ブランド戦略を設計するとき、最初に決めるべきことは明確です。当社代表は本編でこう述べています。

「ブランド戦略を設計する際に最初にすべきことは、『誰に対し』『どのような効果を引き出すために』ブランド力を高めるのかを明確にすることです」 出所:日経クロストレンド「仕事に役立つ知識の『書棚』」(2026年3月26日)

相手として想定できるのは顧客、採用、社内、投資家の4つです。影響はこのすべてに及びますが、投資できる量は限られているため、同時にすべてを最大化することはできません。

ここが実務で最も曖昧になる部分です。ブランドはあらゆる接点に効くため、打てる施策の選択肢が事実上無限にあります。選択肢が多いということは、優先順位を決めないまま進むと投資が分散して効果が見えなくなるということでもあります。


この発想には学術的な裏づけがあります。ブランドの価値は「ブランドについての知識が、そのマーケティングに対する反応に与える差分の効果」と定義されており、価値の源泉は企業の側ではなく相手の頭の中にある知識に置かれています。相手が変われば価値の内容も変わるため、どの相手の知識を変えたいのかを先に決める必要が出てきます。 出典:Kevin Lane Keller, "Conceptualizing, Measuring, and Managing Customer-Based Brand Equity," Journal of Marketing, Vol.57, No.1 (January 1993), pp.1-22

支援会社を選ぶ場面でも同じ構造が働きます。ブランディングを一括で対応すると掲げる会社は多い一方で、実際には得意な領域と不得意な領域があります。自社が優先したい市場と、相手の得意領域が合っているかを見極める必要があります。


実務での判断軸


1.いま最も痛んでいる市場はどこか。

売上が伸びないのか、採用で決定率が上がらないのか、離職が続いているのか、資金調達で評価が上がらないのか。経営課題として最も切迫している側から選びます。ブランドの都合ではなく、経営の都合で決める順番です。

 

2.効果を測る指標を用意できるか。

顧客市場なら選ばれる確率や購入単価、採用市場なら応募数やオファー後の決定率、社内なら離職率、投資家市場なら期待の水準です。測れない市場を優先すると、投資の継続を説明できなくなります。

 

3.支援を受ける相手の得意領域と合っているか。

一括対応と掲げていても、実際の強みは領域ごとに偏ります。自社が優先する市場での実績を具体的に確認します。


理念の整備を最初に置きたくなる場面は多いのですが、順序としては注意が必要です。理念は長期にわたって企業のあり方に影響を与えるもので、市場での競争力に対する即効性は期待しにくい性質を持ちます。


編集部おすすめポイント


ブランドの効果は語られる機会が多い一方で、相手ごとに分けて整理した解説は限られます。本編は4つの市場それぞれで期待できる成果を具体的に挙げ、支援会社選びの注意点まで触れています。投資の目的を社内で決めきれていない方には、議論の枠組みとして使えます。


本編で読めること


本編では、次の問いに対する答えが示されています。


  • 4つの市場それぞれで、具体的にどのような成果が期待できるのか

  • 知っているブランドが選ばれやすいという現象は、どの場面で働くのか

  • 理念やパーパスの整備は、市場での競争力に対してどの程度効くのか

  • マーケティングの4P施策の判断において、ブランド戦略はどう関わるのか


ブランド戦略にまつわる3つの誤解については、同じ連載の前の回で扱っています。


よくある質問


Q. 4つの市場すべてに取り組むことはできないのですか。

A. 投資できる量が限られているため、同時に最大化することはできません。ただし優先した市場での取り組みが、結果として他の市場にも及ぶことはあります。狙いを1つに定めるという意味です。

 

Q. 理念やパーパスの策定から始めるのは間違いですか。

A. 間違いではありませんが、市場での競争力に対する即効性は期待しにくい性質のものです。短期の課題を解決したい場合は、優先する市場での接点の設計から着手するほうが順序として合います。

 

Q. 支援会社の得意領域は、どうやって見極めればよいですか。

A. 自社が優先したい市場での実績を、具体的な内容で確認することです。一括で対応すると掲げていても、領域ごとに強みの偏りがあるのが実情です。


インサイトフォース山口の、「悪魔の事典」


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執筆者

インサイトフォース編集部

ブランド戦略とマーケティング組織の設計を専門とするコンサルティングファームです。事業戦略とブランドを接続する支援を中心に、経営層、事業部門、マーケティング部門の橋渡しを担ってきました。本記事は、当社代表による日経クロストレンドへの寄稿をもとに、編集部が要点と判断材料を整理したものです。

掲載情報

媒体

日経クロストレンド

連載

仕事に役立つ知識の「書棚」

公開日

2026年3月26日

掲載形式

寄稿


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