CMOを置くべきかどうかの判断軸|業態・商品・創業家で変わる3つの視点
日経クロストレンド 連載「凄腕マーケターが『クロトレ』を斬る」(2025年11月21日)にて、当社代表が寄稿しています。
立派なマーケティング組織図を描いても、その通りに機能するとは限りません。CMOという役職を置くかどうかの議論は、置く置かないの二択で決まるものではなく、企業の構造に左右されます。判断の前に確認しておきたい要因を整理します。
この記事の要点
CMOは役職ではなく、必要な役割と機能の集合体として捉えると判断を誤りにくくなります。
1人が担うか複数人の連携で担うかは手段の違いで、成果が出ていれば正しい状態です。
権限の広さは、業態、商品のコモディティ度合い、創業家の存在という構造に左右されます。
CMOがいなくても機能している企業があるため、不在そのものを問題とは言えません。
こんな方におすすめ
CMO職の設置を検討していて、自社に適しているか判断したい経営層の方
マーケティング組織を作ったが、期待した権限が伴っていない と感じている方
CMOとして招かれたが、社内の意思決定に関われていない立場の方
前提となる3つの用語
CMOとは
CMOとは、最高マーケティング責任者のことである。教科書的には、事業や商品を横断して投資配分を最適化し、施策の企画と推進、人材開発と業務支援まで担い、売上と収益の伸びに責任を持つ役割を指す。ただし実際の管掌範囲は企業によって大きく異なる。
マーケティング組織とは
マーケティング組織とは、顧客の獲得と維持に関わる機能を担う部門の総称である。名称は企業によって異なり、営業企画部と呼ばれる場合もある。名称が古く見えても、必要な意思決定と施策が推進されて成果が出ていれば、機能している状態と判断できる。
コモディティ化とは
コモディティ化とは、商品やサービスの機能面での差が小さくなり、選ばれる理由が価格や印象に移っていく状態である。この度合いが高い業界では、機能の開発より訴求の設計が売上を左右するため、マーケティング部門の責任範囲が広くなりやすい。
論点の背景
CMOの肩書を取りやめ、別の役職名に切り替える企業が増えています。この動きを「マーケティングの地位が下がった」と読むと判断を誤ります。当社代表は本編で、捉え方の起点をこう述べています。
「CMOは役職を示す概念ですが、CMOを役割・機能の集合体として捉えることが本質を見誤らないポイントと感じます」 出所:日経クロストレンド「凄腕マーケターが『クロトレ』を斬る」(2025年11月21日)
本質的な問いは、必要な役割と機能を1人が担うのか、複数の人や組織の連携で担保するのかという点です。どちらでも、必要な意思決定と施策が推進されて成果が出ていれば正しい状態です。
そのうえで現実的な制約があります。事業や商品を横断する中央集権的な責任者を置くことが、組織文化として成り立たない企業は少なくありません。仮に受け入れる覚悟があっても、担える人材が社内にいるのか、社外から採用できるのかを考えると選択肢は限られます。だからこそ、望ましい姿を描く前に自社の構造を確認する順番になります。
マーケティング部門が主導権を持つ企業は、実際には多くありません。マーケティング組織を実証的に分類した研究では、成長に直接責任を持つ教科書的な型は調査対象の約17パーセント、社内の要望に応えるサービ ス提供の型が約43パーセント、ブランドとコミュニケーションを主に担う型が約40パーセントでした。教科書どおりの姿が実現しているのは6社に1社程度ということになります。 出典:"A taxonomy of marketing organizations," Journal of the Academy of Marketing Science, Vol.51, pp.617-635 (published online 16 December 2022)
実務での判断軸
1.業態が投資と売上を結びつけられる構造か。
顧客に直接販売する業態では、マーケティング部門の成果が業績に直結するため権限は自然に広くなります。一方で自社の営業が人力で売り切る力を持つ企業では、マーケティングは商談化までの前工程に位置づけられやすくなります。営業が数字を作れる成功体験が強いほど、この傾向は 強まります。
2.商品のコモディティ度合いはどちらに寄っているか。
機能面での差が小さい業界では、訴求の検証結果から商品開発が始まるため、マーケティング部門が商品開発にも関与し責任範囲が広がります。技術開発で製品が大きく進化する業界では、開発と事業部門が力を持ち、マーケティングは製品化後の役割に寄ります。
3.横断的な判断を誰が担っているか。
権限の強い創業者や創業家の経営者がいる場合、事業を横断する投資判断や短期と長期の調整はその方が担っていることが多くあります。この構造では、CMOを置いても実務の推進が主な役割になります。
3つを確認した結果、CMOを置かないという結論も成り立ちます。事業横断の収益分析を経営企画が担い、伸びしろに応じた投資配分が経営のリードで決まり、各部門が施策を推進できていれば、機能している状態です。
編集部おすすめポイント
マーケティングの戦略や事例の解説は数多くある一方、組織としてどう機能させるかを扱った情報は限られます。本編は200社以上の支援経験から、CMO職の有無と権限の広さを左右する構造を分類しています。 役職の設置を議題にしている方には、判断の枠組みとして使えます。
本編の続きで読めること
本編の有料会員限定パートでは、次の問いに対する答えが示されています。
創業家の経営者がいる企業で、CMOはどのような役割に落ち着くのか
自分の意見を強く持つCMOほど難しくなる調整とは、どのようなものか
CMOが不在でも機能している企業は、どの部門が何を担っているのか
担い手を選ぶ際に、能力以外に何を見る必要があるのか
読了時間は約6分です。日経クロストレンドの有料会員限定記事となります。
よくある質問
Q. CMOを置か ない企業は遅れているのですか。
A. そうは言えません。事業横断の分析と投資配分が経営のリードで決まり、各部門が施策を推進できていれば、CMOが不在でも機能している状態です。不在そのものを問題と言い切れるものではありません。
Q. 営業企画部という名称は変えるべきですか。
A. 名称より機能が伴っているかで判断します。営業の力が強い企業では、マーケティングが商談化までを担う構造が実態に合っている場合があり、それでうまくいっているなら問題ありません。
Q. CMOを外部から採用すれば解決しますか。
A. 採用できるかどうかの前に、その役割が成り立つ組織文化があるかを確認する必要があります。横断的な権限を受け入れる土台がないまま招くと、能力とは別の理由で機能しなくなります。
インサイトフォース山口の、「悪魔の事典」
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執筆者
インサイトフォース編集部 |
ブランド戦略とマーケティング組織の設計を専門とするコンサルティングファームです。20年以上にわたり、累計200社以上の支援を通じて、経営層、事業部門、マーケティング部門の橋渡しを担ってきました。本記事は、当社代表による日経クロストレンドへの寄稿をもとに、編集部が要点と判断材料を整理したものです。 |
掲載情報
媒体 | 日経クロストレンド |
連載 | 凄腕マーケターが「クロトレ」を斬る |
公開日 | 2025年11月21日 |
掲載形式 | 寄稿 |
公開範囲 | 日経クロストレンド有料会員限定 |
