部分最適から抜けられない理由|ブランド施策を全体の成果につなげる3つの手順
ITmediaマーケティングにて、当社代表取締役・山口義宏が、SNSマーケティングを専門とする事業会社の役員を聞き手に、ブランド形成のために何から着手すべきかを語っています。後編です。
施策ごとの数字は改善しているのに、事業の成果が動かない。この状態は担当者の力量ではなく、誰がどの順序で決めているかから生まれています。抜け出すための手順を整理しました。
この記事の要点
部分最適は担当者の視野ではなく、意思決定の順序から生まれています。
自社がオーナー主導か合議制かで、ブランド戦略の進め方は変わります。
決めてから各部門に伝えると、表に出ない形で方針が無視されます。
施策のレビューを部門横断にすると、戦略への当事者意識が生まれます。
こんな方におすすめ
施策の数字は良いのに事業の成果につながっていないと感じている事業責任者の方
決めたブランド方針が現場で守られず、繰り返し差し戻されている方
部門をまたいだ合意の取り方に困っているマーケティング責任者の方
前提となる3つの用語
トップダウンとは
トップダウンとは、上位の意思決定者が方針を決め、それを下の階層へ伝えて実行させる進め方のことである。決定は速い一方、伝えられた側が決める過程に関わっていないため、納得が伴わないまま形だけ従う状態になることがある。
ガバナンスとは
ガバナンスとは、組織の中で何を誰がどう決めるかを定めた統治のしくみのことである。同じ施策でも、決定権が1人に集まっているか複数部門に分かれているかで進め方がまったく変わるため、着手前に自社の型を把握する必要がある。
合議制とは
合議制とは、複数の関係者の話し合いによって意思決定を行う方式のことである。決定までに時間がかかる一方、決める過程に関わった部門が増えるため、決まったあとに方針が覆りにくいという性質を持つ。
論点の背景
ブランドの方針を決めたのに現場で守られない、という相談は珍しくありません。多くの場合、原因は担当者の理解不足ではなく、決めた順序のほうにあります。
この掲載で挙げられている失敗の筆頭は、自社の意思決定の型 を見誤ることです。1人のオーナー経営者が主導権を握る企業と、複数部門の合議で決める企業とでは、同じ進め方は通用しません。
合議で決める企業では、事業部の中で練った方針を後から各部門へ伝えると、表立った反発が起きることがあります。ただし、より厄介なのは反発が表に出ない場合です。従っているように見えて方針が無視されていると、原因が特定できません。
施策を評価する場も同じ構造を持っています。それぞれの部門が自分の指標だけを見ている限り、指標が全部改善しても事業の数字が動かないという状態が続きます。
IPAの調査では、経営者とIT部門と業務部門の協調ができていると答えた企業は日本では約4割で、米国の8割弱、ドイツの6割5分程度と開きがあります。報告書は連携不足の原因のひとつに、業務部門ごとの個別最適化を挙げています。 出典:IPA「DX動向2025」(2025年6月26日)
実務での判断軸
1.自社の意思決定の型を先に見極めているか。 オーナー経営者が主導権を握っているなら、まず本人とその周辺で合意し、上から現場へ伝える順序が通ります。合議で決める企業で同じやり方をすると、後から覆されます。規模ではなく決め方で分けてください。
2.伝える前に、決める場へ巻き込んでいるか。 決めてから伝達する進め方は速く見えますが、関わらなかった部門にとっては従う理由がありません。立てる段階から関係部門を入れると意思決定は遅くなります。それでも、後から覆される損失より小さく収まります。
3.レビューを部門横断で回しているか。 施策の評価を担当部門だけで行うと、指標は改善し続けます。四半期に一度でも部門をまたいで課題の優先順位をそろえる場を持つと、商品開発と集客の間で意見が行き交うようになります。
3つとも、速さを手放す判断を含みます。巻き込むほど決定は遅くなり、その遅さは目に見えます。一方で、後から覆された分の損失は誰の数字にも計上されません。見えるコストと見えないコストを並べて判断する必要があります。
編集部おすすめポイント
この掲載は、ブランディングを進め方の問題として扱っている点が特徴です。何を掲げるかではなく、誰がどの順番で決めるかに踏み込んでいるため、方針が現場で止まる理由を組織の側から見直す材料になります。
悪魔の事典
書き出し
本編で読めること
ここでご紹介したのは、判断の枠組みにあたる部分です。本編では、次の問いに対する答えが示されています。
オーナー主導の企業では、誰から順に合意を取るのか
合議制の企業で、事業部横断のチームはどう立ち上げるのか
自社の提供価値を社員と顧客から引き出す手順はどうなるのか
市場シェアが落ちている局面では、誰の声を聞くべきなのか
本編はITmediaマーケティングで公開されています。無料で読めますが、途中から会員登録またはログインが必要です。
よくある質問
Q.部門横断にすると決定が遅くなりませんか。
A.遅くなります。ただし比べる相手は、決めた方針が後から覆されたときの手戻りです。合議で決める企業では、立てる段階から関係部門を入れるほうが結果的に速く収まります。
Q.自社がどちらの型なのか判断がつきません。
A.重要な方針が1人の判断でひっくり返る経験があるなら、オーナー主導の型です。複数部門の了解がないと前に進まないなら合議制です。規模ではなく、過去に何が決定を動かしたかで判断してください。
Q.市場シェアが落ちているときは、何から見直せばよいでしょうか。
A.既存のお客さまに選ばれた理由を聞いて強化しても、局面は変わりにくいところです。候補に挙がったのに選ばれなかった場合と、そもそも候補に挙がらなかった場合を分けて聞いてください。
執筆者
インサイトフォース編集部 | ブランド戦略とマーケティング組織の設計を専門とする編集部が、掲載記事の論点を実務で使える形に整理しています。 |
掲載情報
媒体 | ITmediaマーケティング |
記事 | ブランディングとSNSは切り離せない|山口義宏氏×いいたかゆうた氏対談 |
掲載形式 | 対談の後編(当社代表が語り手) |
公開範囲 | 無料(途中から会員登録が必要) |
