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第一想起への投資が売上につながらないとき|判断が分かれる3つの分岐

日経クロストレンドの連載にて、当社代表取締役・山口義宏による寄稿記事「ブランド想起の罠 売り上げにつながらない3つの落とし穴」が掲載されています。

想起の順位を上げれば売上が伸びる、という前提は状況によって成り立ちません。投資規模が大きくなりやすい領域だからこそ、伸びしろの試算を先に置く必要があります。


この記事の要点


  • 想起の順位を上げる投資が効くのは、検討されるブランド数より自社の順位が下にあるときです。

  • すでに検討候補に入っているブランドでは、追加投資のリターンは小さくなります。

  • 表現が競合と同質化すると、広告の記憶は残ってもブランド名と結びつきません。

  • 販売の主導権が流通側にある業態では、想起の順位を上げる優先度は下がります。


こんな方におすすめ


  • テレビ広告への投資を検討していて、成果の見立てを社内で説明したい方

  • 認知や想起の指標は改善したのに、売上が動かないと感じている宣伝部門の方

  • 販売チャネルの構造が複雑で、どこに投資すべきか判断がつかない方


前提となる3つの用語

純粋想起とは


純粋想起とは、カテゴリー名だけを示されたときに、顧客が手がかりなしで思い出せる状態である。選択肢を提示して知っているかを問う助成想起と区別される。購入の場面で候補に入るかどうかを判断する材料として使われる。


販売チャネルとは


販売チャネルとは、商品やサービスが顧客に届くまでの経路のことである。自社が直接販売する経路と、小売や施工店を介する経路では、購入の意思決定に影響を持つ相手が変わる。誰を動かすべきかがここで決まる。


棚割りとは


棚割りとは、小売の売り場でどの商品をどの位置にどれだけ並べるかを決めることである。顧客の目線に入る位置を確保できるかが購入率に影響するため、メーカー側からは完全に制御できない変数として扱われる。


論点の背景

想起の順位と購入の間には、正の相関が観測されることが多くあります。ただしその相関には、想起があるから買ったという向きと、買ったから想起するようになったという向きの両方が混ざっています。どちらが主かの検証は容易ではありません。

 

投資の判断で決定的なのは、顧客が実際に検討するブランドの数です。平均して2つか3つしか比較しない市場では、4番目以降に思い出されるブランドは検討の対象に入る機会そのものが大きく減ります。この位置にいるブランドが上位に入れば、売上は伸びやすくなります。

 

逆にすでに上位にいるブランドでは、順位を上げる追加投資の効果は限られます。この場合は商品力の強化、売り場での販促、在庫の運用改善に振り向けたほうが売上への貢献は大きくなります。論点は獲得ではなく維持の効率に移ります。


2025年の総広告費は8兆623億円で前年比105.1パーセントとなり、そのうちインターネット広告費は4兆459億円で構成比50.2パーセントと初めて過半に達しました。投資先の選択肢が広がったぶん、配分の判断が成果を左右する度合いも上がっています。 出典:電通「2025年 日本の広告費」(2026年3月5日)

実務での判断軸


1.検討されるブランド数と自社の順位の差を測ったか。 顧客が実際に比較する数と、自社が何番目に思い出されるかを並べて確認します。検討される数より下にいるなら伸びしろがあり、すでに上位にいるなら投資は維持の効率化に振り向けるほうが妥当です。

 

2.表現が自社のものとして識別されるか。 広告を大量に投じても、表現に独自性がないとブランド名と結びつきません。競合と同じ場面や同じ起用が重なると、記憶は残っても他社に流れます。識別されるかどうかを、出稿量とは別に検証する必要があります。

 

3.そのカテゴリーで想起を取ることが売上のドライバーか。 購入の主導権が流通や施工の担い手にある業態では、顧客の頭のなかの順位より、推奨される確率を上げる施策のほうが効きます。また同じ企業でも、どのカテゴリーで想起されたいかによって戦略は変わります。


3つの分岐は、投資の可否ではなく投資先の選択に関わります。順位を上げる投資が向かないという判断は、商品力、販促、流通との関係構築のいずれかに配分を移すという判断と同じ意味になります。


編集部おすすめポイント


想起への投資は、すべての指標を好転させる手段として語られやすい領域です。本編では、支援の実務で繰り返し観測されてきた失敗の型が具体例とともに整理されています。投資の前に伸びしろを試算するための視点として読めます。


本編の続きで読めること


ここでご紹介したのは、判断の枠組みにあたる部分です。本編では、次の問いに対する答えが示されています。


  • 検討されるブランド数は、どのように把握するのか

  • 同質化した表現から抜けるには、何を変えると識別されるのか

  • 流通が主導する業態では、どの施策の優先度が上がるのか

  • どのカテゴリーで想起を取るべきかは、何を見て決めるのか

本編は日経クロストレンドの有料会員限定記事です。


よくある質問


Q.認知率も想起率も改善しています。それでも売上が動かないのはなぜでしょうか。

A.順位が上がった先の位置が、顧客が実際に検討する数の中に入っていない可能性があります。比較されるのが2つか3つの市場で、4番目から3番目に上がっても検討の機会は大きく変わりません。検討される数を先に確認してください。

 

Q.同質化を避けるには、目立つ表現にすればよいのでしょうか。

A.目立つことと識別されることは別です。起用したタレントや演出が記憶されても、自社の名前と結びつかなければ効果は他社に流れます。自社を指し示す要素が表現の中に残っているかを基準にしてください。

 

Q.流通が推奨するかどうかは、こちらでは動かせないのではないでしょうか。

A.動かせる部分があります。説明しやすい訴求点、運搬や設置の負担が軽い仕様、取引条件、説明に使える資料の作り方などは自社側の設計です。顧客の想起より前に、この経路の設計を見直す価値があります。


悪魔の事典


書き出し


執筆者

インサイトフォース編集部

ブランド戦略とマーケティング組織の設計を専門とする編集部が、掲載記事の論点を実務で使える形に整理しています。

掲載情報

媒体

日経クロストレンド

記事

ブランド想起の罠 売り上げにつながらない3つの落とし穴

掲載形式

寄稿

公開範囲

日経クロストレンド有料会員限定


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