社内に答えはあるのに決まらない理由|合意形成を進める3つの手順
Agenda noteにて、当社代表取締役・山口義宏が、化粧品事業会社の取締役を聞き手に、ブランドコンサルティングの業務範囲と、依頼を受けてから提案に至るまでの進め方を語っています。
打ち手が的を外し続けている会社でも、社内の誰かは答えの断片を持っています。それでも前に進まないのは、個人の力量ではなく合意形成の問題です。何がそろえば合意に運べるのかを、判断の順序として整理しました。
この記事の要点
問題意識と解決策を社内の誰も持っていない会社は、ほとんどありません。
進まない原因は考え方の違いよりも、立場ごとに見ている情報が違うことにあります。
情報を棚卸しして並べ直すと、課題と打ち手はかなりの確率でそろいます。
大手企業のマーケティングの課題は、組織の決め方の問題と表裏一体です。
こんな方におすすめ
施策の案は出るのに社内で決まらず、時間だけが過ぎていると感じている方
経営層と現場で課題の見え方がずれ、議論が噛み合わないマーケティング責任者の方
外部に支援を依頼する前に、自社で何を整理しておくべきか知っておきたい方
前提となる3つの用語
グループインタビューとは
グループインタビューとは、複数の対象者を一か所に集め、司会者の進行のもとで意見を交わしてもらう定性調査のことである。一人ずつ聞く方式に比べ、他者の発言に反応する形で本音が出やすい。
デスクリサーチとは
デスクリサーチとは、すでに公開されている資料や統計を集めて整理し、対象の構造を理解する調査のことである。新たに人へ聞く前の段階に置き、仮説の土台をつくる役割を担う。
定量調査とは
定量調査とは、多数の対象者から回答を集め、割合や平均などの数値で傾向をとらえる調査のことである。少数の声がどの程度の広がりを持つのかを確かめるために使う。
論点の背景
外部へ支援を求める会社の多くは、社内に答えがないから頼むのだと考えています。ただし実際に中へ入ると、課題の見立ても打ち手の案も、たいてい誰かが持っています。足りていないのは案ではなく、それを一つに束ねる過程のほうです。
見解は少しずつずれたまま噛み合いません。社長と役員、事業部長と現場が、同じ言葉を使いながら違うものを指している。この状態で会議を重ねても、声の大きい人の一言で決まる形に落ち着きます。
ずれの原因は、考え方の違いよりも、立場ごとに触れている情報が違うことにあります。だからこそ、それぞれが持っている情報を棚卸しして並べ直すだけで、課題認識はかなりの確率でそろいます。組織の対立に見えた多くは情報の差です。
提案までの進め方も、この順序でできています。デスクリサーチで事業の構造をつかみ、経営陣と現場に聞いて仮説を立て、グループインタビューや定量調査で顧客の側から確かめる。順番に意味があります。
情報処理推進機構の調査では、経営者・IT部門・業務部門の協調ができていると答えた企業の割合は、日本が約4割で、米国の8割弱やドイツの6割5分程度を下回っています。決められない状態は、個社の事情に限りません。 出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2025」(2025年6月26日公表)
実務での判断軸
1.課題を指す言葉が、立場ごとに同じものを指しているか。 売上が落ちている、認知が足りない、といった言い方は誰も否定できません。その裏で各自が思い浮かべている場面を口に出してもらうと、同じ言葉で別のことを話していたと分かる場面が出てきます。
2.ずれを、人の問題ではなく情報の差として扱えているか。 分かっていない人がいる、という整理にした時点で合意は遠のきます。誰が何を見て、何を見ていないのかを先に並べてください。見ている資料をそろえるだけで、意見が一致することは珍しくありません。
3.最初に倒す一つを、絞り切れているか。 同時に複数の課題へ手を伸ばすと、どれも合意に届きません。解くべき課題を一つ決め、そこへ投げる施策まで合意できれば前進です。残りは、その一つが動いてから並べ直せば足ります。絞れないときは、外した課題を捨てたのではなく後に回しただけだと明言しておくと、合意が通りやすくなります。
3つに共通するのは、決まらないことを能力の問題として扱わない姿勢です。人を入れ替えても情報の配り方が同じなら、同じ場所で止まります。先に動かすのは人ではなく、判断に使う材料のほうです。
編集部おすすめポイント
この掲載は、外部へ相談する前に自社で何が起きているのかを見直す材料になります。支援の中身が調査と整理の積み重ねとして具体的に語られているため、どこまでを自社でやり、どこから任せるのかを切り分けて考えられます。外部に何を期待するのかが定まっていない状態で声をかけると、提案の良し悪しを判断する基準も持てないまま話が進みます。
悪魔の事典
書き出し
本編で読めること
ここでご紹介したのは、判断の枠組みにあたる部分です。本編では、次の問いに対する答えが示されています。
依頼から提案までを、どの順序で組み立てているのか
顧客側の検証に、どの調査手法をどう使い分けているのか
社内で答えを持っているのは、どの立場の人であることが多いのか
大企業のマーケティングの課題が、組織の問題と重なるのはなぜか
本編はAgenda noteで公開されています。無料で読めます。
よくある質問
Q.外部に頼むのは、社内に答えがないからではないのでしょうか。
A.答えの断片は社内にあることがほとんどです。外部が担うのは、断片を集めて立体にし、判断に使える形へ整える部分です。答えを持ち込むのではなく、持っているものを使える状態にする作業になります。
Q.議論が噛み合わないとき、最初に何をすればよいでしょうか。
A.それぞれが何を見て判断しているのかを並べてください。見ている数字や現場の情報が違えば、結論が違うのは当然です。材料をそろえてから議論すると、対立に見えたものが解ける場合があります。
Q.画期的な打ち手が出てこないと、成果は変わりませんか。
A.事業が伸びる局面の多くは、突飛な発想ではなく地道な積み上げでできています。解くべき課題を一つに絞り、そこへ資源を集める判断のほうが効きます。
執筆者
インサイトフォース編集部 | ブランド戦 略とマーケティング組織の設計を専門とする編集部が、掲載記事の論点を実務で使える形に整理しています。 |
掲載情報
媒体 | Agenda note |
記事 | ブランドコンサルの業務を徹底解剖。コンサルタントが持つべき強みとは何か |
掲載形式 | インタビュー(当社代表が語り手) |
公開範囲 | 無料 |
