新商品開発に着手する前に確かめること|売上を伸ばす4つの打ち手をやりきったか
日経クロストレンドの連載にて、当社代表取締役・山口義宏による寄稿記事「マーケの落とし穴 新製品開発の前にやるべき4つの売り上げ増加策」が掲載されています。
1つの商品がヒットした後、品ぞろえを広げる判断は前向きに見えます。しかし人と資金が分散すると、売上は微増どころか基幹商品の側が落ちます。商材を増やすのは5番目の手段です。
この記事の要点
売上を伸ばす方法は、短期の3つと中長期の2つを合わせた5つに整理できます。
商材を増やすのはその5番目で、前の4つをやりきってから着手するものです。
品ぞろえを広げても顧客層の拡大は限られる一方、手間は数倍に増えます。
ヒットの直後は判断が強気に傾くため、順序の確認が最も必要な時期になります。
こんな方におすすめ
ヒット商品の次の一手として、品ぞろえの拡大を検討している商品担当の方
売上目標の達成に向けて新商品の企画を求められている事業部門の方
新商品を投入したのに収益性が悪化したと感じている方
前提となる3つの用語
リピート率とは
リピート率とは、一度購入した顧客が再び購入する割合である。商品そのものや使用の過程で得られる便益の高さがこの割合を左右し、売上と利益を伸ばせる上限を決める要因になる。
潜在顧客とは
潜在顧客とは、その商品の価値を評価する見込みがありながら、まだ存在を知らないか購入に至っていない層である。接触の範囲を広げる投資は、この層に届く機会を増やすことを目的とする。
便益とは
便益とは、顧客がその商品やサービスから得られる利点のことである。機能の仕様そのものではなく、顧客の側にどのような良い変化が起きるかを指す。この水準を上げる打ち手は着手に時間がかかるが、上限を押し上げる効果が大きい。
論点の背景
1つの商品がヒットした企業がその後につまずく理由は、品ぞろえを広げる判断に集約されます。例えば効果を求めて買われている商品で味の種類を増やしても、顧客が求めているのは効果であって味ではありません。
この場合、顧客層の拡大はわずかに留まる一方で、生産と販売にかかる手間は種類の数だけ増えます。各商品に配分する人と資金が薄まり、基幹商品の売上まで落ちる結果になることが少なくありません。
判断が強気に傾くのは、ヒットの直後です。当事者が手応えを得ている時期に品ぞろえの拡大が決まり、後から振り返って反省するという経過をたどります。だからこそ、着手の前に順序を確かめる作業が必要になります。
2024年の国内のBtoC電子商取引の市場規模は26.1兆円で前年比5.1パーセント増となりましたが、EC化率は9.8パーセントにとどまっています。接触の範囲を広げる余地は、多くの商材でまだ残っている状態です。 出典:経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日)
実務での判断軸
1.接触の範囲を広げる余地が残っていないか。 その商品の価値を評価しそうな層に、まだ届いていない部分があるかを確かめます。広告や広報への投資を強化する打ち手がここに当たります。届いていない層が残っているなら、商材を増やす前にここへ配分します。
2.訴求の組み替えを試したか。 同じ商品でも、対象とする顧客層と提案する価値を組み替えると新しい層やニーズを捉えられます。獲得の費用を抑えながら数を伸ばす手段として、商材を増やすより先に検討すべき打ち手です。
3.便益そのものを高める打ち手を尽くしたか。 商品や使用の過程で得られる利点を高める打ち手は、着手に時間がかかります。しかし再購入と顧客生涯価値に大きく影響し、売上と利益を伸ばせる上限そのものを決めます。最も重要な部分です。
4つ目は、購入時に顧客が感じる負担を減らすことです。価格を下げる以外に、入手までの手間や時間、選ぶ負担、品質への不安を軽くする方法があります。この4つをやりきって初めて、5つ目の商材を増やす判断に進みます。
編集部おすすめポイント
新商品の企画は、売上の課題に対する打開策として最も魅力的に見える選択肢です。本編では、品ぞろえを広げる判断がなぜつまずくのかが具体例で示され、そのうえで売上を伸ばす方法の全体像が整理されています。自社の順序が飛んでいないかを点検する材料になります。
悪魔の事典
書き出し
本編で読めること
ここでご紹介したのは、判断の枠組みにあたる部分です。本編では、次の問いに対する答えが示されています。
売上を伸ばす5つの方法は、どのように分類されているのか
訴求の組み替えは、どの接点でどう試すのか
顧客が感じる負担は、価格以外にどこを削れるのか
4つをやりきったと判断できるのは、どの状態か
本編は日経クロストレンドで公開されています。
よくある質問
Q.品ぞろえを広げること自体が間違いなのでしょうか。
A.間違いではありませんが、順序があります。接触の範囲、訴求の組み替え、便益の向上、購入の負担の軽減という4つの打ち手をやりきって、これ以上伸びないという状態に至って初めて商材を増やす判断に進むのが基本です。
Q.目先の売上目標があり、4つを試す時間がありません。
A.その状況こそが、順序を飛ばす典型的な条件です。商材を増やす打ち手は、開発と生産と販売の手間が同時に増えるため、短期の売上に効くまでの時間はむしろ長くなります。訴求の組み替えのほうが早く動けます。
Q.便益を高める打ち手は時間がかかります。後回しにしてよいでしょうか。
A.後回しにすると、売上と利益を伸ばせる上限が動きません。再購入と顧客生涯価値に最も影響する部分であるため、時間がかかることを前提に、着手を止めない形で並行させる判断が必要です。
執筆者
インサイトフォース編集部 | ブランド戦略とマーケティング組織の設計を専門とする編集部が、掲載記事の論点を実務で使える形に整理しています。 |
掲載情報
媒体 | 日経クロストレンド |
記事 | マーケの落とし穴 新製品開発の前にやるべき4つの売り上げ増加策 |
掲載形式 | 寄稿 |
公開範囲 | 無料で閲覧可能 |
