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リブランディングが必要かどうかの見極め方|識別記号と知覚価値のどちらがずれているか

日経クロストレンドの特集「失敗しない『リブランディング』」にて、当社代表取締役・山口義宏がブランド戦略の観点から解説しています。

売れ行きが落ちたときにロゴやパッケージを変える判断は、多くの場合で必要のない打ち手です。顧客のなかにあるブランドを2つの要素に分けると、変えるべき対象が見えてきます。


この記事の要点


  • リブランディングで失敗する最大の原因は、ブランドを企業のものと考えることです。

  • 顧客のなかのブランドは、識別記号と知覚価値の2つに分けて捉えられます。

  • 名前やロゴの変更が必要な例は少なく、問題は知覚価値の側にあることが大半です。

  • 既存顧客の声だけを聞くと、縮小する市場に最適化してしまう危険があります。


こんな方におすすめ


  • 売上の低迷を受けて、パッケージやロゴの刷新を検討している商品担当の方

  • リブランディングの提案を受けていて、その必要性を判断したい経営層の方

  • 社名や事業内容が乖離してきていると感じている企業の広報や経営企画の方


前提となる3つの用語

識別記号とは


識別記号とは、文字や音、形など五感による識別でブランドを認識させる記号である。ロゴやパッケージがその代表で、顧客の頭のなかに浸透するほど少ない手がかりでもそのブランドを思い出せるようになる。


知覚価値とは


知覚価値とは、ユーザー像、商品カテゴリー、便益、人格の印象など、そのブランドについて顧客が認識できている内容である。企業が意図した価値と一致するとは限らず、顧客側が独自に見いだしている場合もある。


情緒的価値とは


情緒的価値とは、機能や性能とは別に、顧客が感じ取る心理的な満足のことである。所有することの誇りや世界観への共感などが含まれ、この価値の比重が高い商材では、見た目の古さが選ばれない理由になりやすい。


論点の背景

既存の認知を活かせるという理由で、新規のブランドを立てるよりも既存ブランドを作り直すほうが費用を抑えられるという判断が働きます。ただしその判断は、顧客が望まない変更を伴うと逆に働きます。新規顧客は増えず、既存顧客が離れる状態が起こります。

 

この失敗の根にあるのは、ブランドを企業の所有物と考える前提です。顧客のなかのブランドは、生活のなかで感じた価値の積み重ねによって作られています。名前やパッケージ、広告は、その積み重ねを思い出しやすくする手段にすぎません。

 

そこで顧客のなかのブランドを2つに分けます。五感で識別させる記号と、認識されている価値の内容です。このどちらか、または両方が顧客のニーズと大きくずれたときに、軌道修正のための作り直しが必要になります。ずれていないなら手を入れる理由はありません。


2024年の商標登録出願件数は158,792件で前年から減少した一方、商標審査における登録査定率は88.4パーセントと前年から増加しています。新しい名前を得ること自体は難しくないため、変更するかどうかの判断の質が結果を分けます。 出典:特許庁「特許行政年次報告書2025年版」(2025年7月7日)

実務での判断軸


1.目的を相手ごとに定めたか。 売上を伸ばしたい、利益率を上げたいという設定では粒度が粗すぎます。顧客の市場で競争力を上げたいのか、採用力を高めたいのか、投資家からの評価を上げたいのかを先に定めないと、後の判断がすべてぶれます。

 

2.識別記号ではなく知覚価値の問題ではないか。 名前やロゴが良くないから売れないという例は多くありません。認識されている価値の内容に問題があるほうが大半です。記号の変更に進む前に、価値の側を点検する順序を守る必要があります。

 

3.既存顧客の声だけを聞いていないか。 市場が縮んでいる商材では、残っている顧客の要望に合わせるほど成長から遠ざかります。聞くべき相手は、比較検討したうえで買わなかった層です。競争力を取り戻す手がかりはこの層の側にあります。


記号を変える必要があるのは、それが選ぶ際の足かせになっている場合だけです。時流とのずれが大きくなった場合と、目指す価値と過去に定めた記号の整合が取れなくなった場合の2つに絞られます。


編集部おすすめポイント


この特集は、リブランディングを検討する企業が最初に読むべき判断の枠組みを扱っています。本編では複数の企業の事例が取材に基づいて紹介され、識別記号と知覚価値のどちらを変えるべきかを判定するチャートも示されています。


悪魔の事典


書き出し



本編の続きで読めること


ここでご紹介したのは、判断の枠組みにあたる部分です。本編では、次の問いに対する答えが示されています。


  • 識別記号を変えるべき2つのパターンとは、どのような状況か

  • 知覚価値を変えるべき2つのパターンは、どこで見分けるのか

  • 既存顧客の反発があっても実行してよいのは、どのような場合か

  • どちらを変えるべきか迷ったとき、どのような調査で確かめるのか


本編は日経クロストレンドの有料会員限定記事です。この記事は特集の第1回に当たります。


よくある質問


Q.ロゴやパッケージが古く見えます。変更すべきでしょうか。

A.古く見えることは歴史があることにもつながるため、新しく見せることが正解とは限りません。判断の基準は、それが顧客が選ぶ際の足かせになっているかどうかです。情緒的価値の比重が高い商材では足かせになりやすく、そうでない場合は慎重に判断してください。

 

Q.社名と事業内容が合わなくなってきました。これは変更の対象になりますか。

A.目指す価値と過去に定めた記号の整合が取れない場合に当たるため、検討の対象になります。以前の社名が別のカテゴリーを連想させて販売の足かせになっている状態であれば、変更によって事業が伸びた例もあります。

 

Q.既存顧客からの反発が予想されます。それでも進めるべきでしょうか。

A.目的が顧客数の増加であれば、離反顧客の復帰と新規顧客の増加が既存顧客の離脱を上回れば成功と判定できます。ただし市場が縮小しているのか拡大しているのかは、丁寧に見る必要があります。


執筆者

インサイトフォース編集部

ブランド戦略とマーケティング組織の設計を専門とする編集部が、掲載記事の論点を実務で使える形に整理しています。

掲載情報

媒体

日経クロストレンド

記事

失敗しない「リブランディング」 本当に変えるべきは何か、2つのチャート分析

掲載形式

特集第1回・コメント掲載

公開範囲

日経クロストレンド有料会員限定


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