top of page
< Back

マーケティング投資を経営層に説明する方法|LTVと成果の幅で語る

日経クロストレンド 連載「凄腕マーケターが『クロトレ』を斬る」(2026年6月11日)にて、当社代表が寄稿しています。

成果は出ているのに投資の継続が認められない。この状況は施策の質ではなく、説明の仕方で起きていることが少なくありません。経営層がマーケティングをどう見ているのかを踏まえ、認知率やCPAに代わって何を示すべきかを整理します。


この記事の要点


  • 経営層にとってマーケティングは、金額が大きいのに成否の要因が見えにくい投資領域です。

  • 現場の運用指標をそのまま報告しても、経営層が判断に使える情報にはなりません。

  • 示すべきは、投資が今期と来期以降のPLにどう効くかという時間軸を含んだ見通しです。

  • 経営層が求めているのは成功の確約ではなく、成功した場合と失敗した場合の幅です。


こんな方におすすめ


  • 成果を出しているのに投資の継続や増額が認められず、理由が分からない方

  • 役員会での報告資料を、来期に向けて組み直したいマーケティング責任者の方

  • 支援側の立場で、クライアントの経営層への説明を任されている方


前提となる3つの用語

LTVとは


LTVとは、顧客生涯価値のことで、1人の顧客が取引を続ける期間全体でもたらす利益の合計である。1回の購入額ではなく、継続率と継続期間を掛け合わせて算出する。獲得にかかった費用を回収できるかを判断する基準になるため、広告投資の妥当性を説明する土台として使われる。


CACとは

CACとは、顧客獲得コストのことで、新しい顧客を1人獲得するためにかかった費用である。広告費だけでなく、制作費や人件費を含めて算出する。多くの業界で上昇が続いており、当期の費用だけを見ると赤字に見える構造が生まれる。LTVと組み合わせて評価する必要がある。


指名検索とは

指名検索とは、企業名や商品名そのものを検索する行動である。すでに知っている相手を探す行動なので、認知と関心が成立していることを示す。貸借対照表には計上されないが、将来の売上を生む要素として扱える。ブランド投資の効果を数値で追う際の手がかりになる。


論点の背景

経営層がマーケティング投資に慎重になる理由は、担当者の力量への疑いではありません。構造的な理由が2つあります。

1つは金額の大きさです。広告費、制作費、調査費、販促費、顧客管理の仕組み、外部パートナーへの支払いを合計すると、企業規模によって年間で数千万円から数百億円の規模になります。


市場全体でも、2025年の総広告費は8兆623億円で前年比105.1パーセント、4年連続で過去最高を更新しました。うちインターネット広告費は構成比50.2パーセントで初めて過半に達しています。数値で追える領域が増えたぶん、説明の解像度に対する要求水準も上がったと捉えるのが実態に近いでしょう。 出典:株式会社電通「2025年 日本の広告費」(2026年3月5日)

もう1つは、成否を分けた要因が見えにくいことです。売上が伸びたとき、それが広告の効果なのか、営業の努力なのか、競合の失速なのか、市況の追い風なのかを切り分けることは容易ではありません。伸びなかったときも同じで、戦略、表現、媒体、商品力のどこに原因があったのかが曖昧になります。

つまり経営層から見たマーケティングは、支出は確実に発生するが内部で何が起きているかが見えない領域です。この状態で「経営がマーケティングを分かってくれない」と考えても、状況は動きません。動かせるのは説明の側です。


実務での判断軸


1.経営層が使える単位に翻訳しているか。

認知率、好意度、CTR、CVR、CPA、リーチは現場の運用に必要な指標です。しかし経営層が知りたいのは、その投資が今期のPLにどう効き、来期以降にどのリターンをもたらすかです。指標を並べる前に、売上と利益への効き方に変換します。


2.時間軸を数字で示しているか。

「中長期で効きます」という言葉は、実質的に何も説明していません。半年なのか1年なのか3年なのか。何が変われば効いていると判断するのか。指名検索の数か、商談化率か、既存顧客の継続率か。ここを指定して初めて議論が始まります。


3.下振れと撤退の条件を先に置いているか。

成功時の見通しだけを示すと、経営層には判断材料が足りません。下振れした場合の損失額、何を見て止めるか、いつ判断するか、どの打ち手に切り替えるかまで設計しておくと、投資は管理可能なものに見えます。


編集部おすすめポイント

マーケティングの説明力は重要だと繰り返し語られる一方で、何をどう言い換えるかまで踏み込んだ記事は少ないものです。本編は経営層が実際に何を不安に感じているかを起点に、報告に含めるべき要素を具体的に示しています。来期の予算折衝を控えている方には、資料の骨格を組み直す材料になります。


本編の続きで読めること

本編の有料会員限定パートでは、次の問いに対する答えが示されています。

  • 成功と失敗の成果の幅は、具体的にどの項目で示せばよいのか

  • 撤退の判断を、何カ月目にどの数字で行う設計にすべきか

  • 言い切り型の自信が、経営層にはなぜ逆に不安として受け取られるのか

  • 経営層の報酬制度の変化が、マーケティング投資への期待をどう押し上げているのか

読了時間は約8分です。日経クロストレンドの有料会員限定記事となります。


よくある質問


Q. CPAやCVRを報告してはいけないのでしょうか。

A. 現場の運用には必要な指標なので、使う場面を分ける形になります。経営層向けの報告では、それらを売上と利益への効き方に変換したうえで、根拠として添える構成にします。


Q. LTVを算出できる仕組みが社内にありません。

A. 精緻な算出より先に、継続率と継続期間の実績を粗い粒度で把握することから始められます。精度が低い段階でも、投資と回収が期をまたぐ構造を共有できれば議論は進みます。


Q. 成果の幅は、どの程度まで示せばよいのですか。

A. 幅を狭く見せる必要はありません。上限と下限、そして下限に振れた場合の対応まで揃っていることが重要です。狭い幅を提示するより、対応が設計されているほうが判断しやすくなります。


インサイトフォース山口の、「悪魔の事典」


※ここから書き出しお願いします!


執筆者

インサイトフォース編集部

ブランド戦略とマーケティング組織の設計を専門とするコンサルティングファームです。20年以上にわたり、経営層、事業部門、マーケティング部門の橋渡しを担うコンサルティングを提供してきました。本記事は、当社代表による日経クロストレンドへの寄稿をもとに、編集部が要点と判断材料を整理したものです。

掲載情報

媒体

日経クロストレンド

連載

凄腕マーケターが「クロトレ」を斬る

公開日

2026年6月11日

掲載形式

寄稿

公開範囲

日経クロストレンド有料会員限定


bottom of page