ブランド価値がまた語られている理由|過去のブームと今回の違い
ベイジTVにて、ベイジ代表・枌谷力氏と当社代表取締役・山口義宏の対談動画「ブームの変遷から見る『ブランディングの現在地』」が公開されています。
ブランドへの関心が高まる局面は、これまで数年ごとに繰り返されてきました。そのたびに過剰な期待が混ざり、うまくいかない案件が増えて熱が引きます。今回の高まりには、過去とは違う2つの要因があります。
この記事の要点
ブランドへの関心は数年 おきに高まり、そのたびに過剰な期待が混ざります。
過去には社名の刷新、価値の金額換算、意匠を重視した商品開発の波がありました。
今回の要因は、獲得費用の高騰による限界感と、上場維持の基準の引き上げです。
ブランドを作るのは顧客体験であり、それを担うのは測定する部門ではありません。
こんな方におすすめ
ブランドへの投資を検討していて、社内の期待値を調整したい経営層の方
デジタル施策の獲得費用が上がり、次の打ち手を探しているマーケティング責任者の方
ブランドを管理する部署に所属していて、事業部門を動かせないと感じている方
前提となる3つの用語
ハイプサイクルとは
ハイプサイクルとは、新しい概念や技術に対する期待が高まった後に落ち込み、その後で実用の段階に落ち着いていく推移を表した見方である。支援の領域でも、名称が流行するときには過剰な期待が混ざりやすい。
認知負荷とは
認知負荷とは、人が何かを理解したり選んだりするときにかかる負担のことである。既に認知していて理解しているものはこの負担が小さいため選ばれやすくなる。ブランドが機能する原理はここにある。
パフォーマンスマーケティングとは
パフォーマンスマーケティングとは、獲得の成果を数値で測りながら投資を調整していく進め方である。費用に対する効果が明確になる一方で、獲得費用が上がると同じ手法の延長では伸ばしにくくなる。
論点の背景
最初の波は社名の刷新でした。国内の企業名から、海外でも通じる呼称へ切り替える動きが広がった時期です。続く波では、ブランドの価値を定量化して金額に換算する取り組みが流行し、各社にブランドを管理する部署が置かれました。
しかし定量化には限界がありました。毎年の測定で数値が上下しても、その変化が何を意味するのかの解釈が難しく、測定の頻度は次第に下がっていきました。その後は意匠を重視した商品開発の波、さらに特定の企業のやり方を模倣する波が続きます。
模倣がうまくいかなかった理由は構造的です。ある企業のやり方が成立するのは、その企業がそのように振る舞うからです。同じ形を別の企業に移すと、似合わない状態になります。波が繰り返されるのは、原理そのものは不変だからです。人は認知していて理解しているものを、負担が小さいために選びやすくなります。
東京証券取引所は2025年9月26日、グロース市場の上場維持基準を上場から5年経過後の事業年度末に時価総額100億円以上とする見直しを公表しました。見直し前は上場から10年経過後に40億円以上で、適用は2030年3月1日以後です。 出典: 東京証券取引所「グロース市場の上場維持基準の見直し等について」(2025年9月26日)
実務での判断軸
1.ブランドに解決を求める前に、獲得の施策をやりきったか。 獲得費用の高騰を理由にブランドへ向かう企業の多くは、その手前でやるべきことを終えていません。施策の進め方を誤っている場合もあります。本当にそこが最大の妨げになっているのかを、先に確かめる必要があります。
2.測定する部門と顧客体験を担う部門が分かれていないか。 ブランドを形づくるのは顧 客体験の積み重ねです。その体験を担っているのは事業部門であり、管理と測定を担う部署は実施者ではありません。この構造のまま旗を振らせると、事業部門を巻き込む段階で必ず止まります。
3.ブランディングという言葉で施策の範囲を広げすぎていないか。 顧客体験の積み重ねがブランドを作るという定義に従うと、後方の業務以外はすべてブランディングになります。何でも含められる言葉になった状態では、成果の帰属も検証も不可能になります。
今回の高まりを生んでいるのは2つの要因です。獲得の費用が上がったことによる限界感と、上場を維持する基準の引き上げです。後者は、認知が得られず投資の検討にすら入っていない企業にとって、事業戦略と並行して取り組む理由になります。
編集部おすすめポイント
ブランドへの関心が高まっているという話は、多くの場所で語られています。本編では、20年以上この領域に携わってきた両者が、過去の波で何が起きて何が残らなかったのかを具体的にたどっています。今回の熱をどう受け取るかの視点として読めます。
本編で読めること
ここでご紹介したのは、判断の枠組みにあたる部分です。本編では、次の問いに対する答えが示されています。
過去のブームでは、それぞれ何が流行して何が残らなかったのか
ブランドを管理する部署が事業部門を動かせない構造とは何か
獲得費用の高騰を理由にブランドへ向かう判断は、どこで誤るのか
上場維持の基準の引き上げは、ブランドの取り組みにどう影響するのか
本編はベ イジTVで公開されている対談動画です。無料で視聴できます。
よくある質問
Q.ブランドへの関心が高まっているなら、今が着手の好機でしょうか。
A.関心の高まりと着手の妥当性は別の問題です。獲得の施策で改善の余地が残っているなら、そちらのほうが先に効きます。自社の最大の妨げがどこにあるのかを確かめてから判断してください。
Q.ブランドを管理する部署を作れば取り組みは進みますか。
A.部署を置くだけでは進みません。ブランドを形づくるのは顧客体験であり、それを担っているのは事業部門です。測定と管理を担う部署が実施者を動かす仕組みを同時に設計しないと、過去と同じ経過をたどります。
Q.上場維持の基準が変わると、なぜブランドの話になるのでしょうか。
A.認知が得られていない企業は、投資の検討対象にすら入りません。業績が伴わなければ株価は動きませんが、業態と成長の道筋を短時間で理解してもらう取り組みは、事業戦略と並行して進める必要が出てきます。
悪魔の事典
書き出し
執筆者
インサイトフォース編集部 | ブランド戦略とマーケティング組織の設計を専門とする編集部が、掲載記事の論点を実務で使える形に整理しています。 |
掲載情報
媒体 | ベイジTV(YouTube) |
記事 | ブームの変遷から見る『ブランディングの現在地』 |
公開日 | 2026年6月23日 |
掲載形式 | 対談動画 |
公開範囲 | 無料 |
