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ブランドマネージャーが最初に見る場所|定番品の売上低下で手順を誤らないために

日経クロストレンドの連載にて、当社代表取締役・山口義宏が、ロングセラーブランドの立て直しを題材にした設問をもとに着手の順序について解説しています。

長く売れてきた商品の数字が少しずつ落ちている。調べても品質への不満は見当たらない。この状況で見た目や宣伝の手法から手をつけると、原因に届かないまま費用だけが出ていきます。


この記事の要点


  • 定番品の売上低下は、不満ではなく買う習慣が静かに消えることから起きることが多いです。

  • 見た目を作り替える判断は、原因の特定より前に置くと傷を深めることがあります。

  • 最初に取り戻すべきは、店頭に置かれている状態と、もう一度手に取る理由の2つです。

  • きっかけづくりは手段であり、定番品そのものを維持することが前提になります。


こんな方におすすめ


  • 長く売れてきた商品の数字が緩やかに落ちていて、原因を特定できていない担当の方

  • デザインの刷新を提案されているが、着手の順序に確信が持てない事業部門の方

  • 新商品の投入頻度が上がり、定番品の扱いが後回しになっていると感じている方


前提となる3つの用語

定番商品とは


定番商品とは、季節や流行に左右されず、通年で継続的に取り扱われることを前提に設計された商品のことである。売場での位置づけが安定している一方、時間の経過とともに買う側の関心が薄れていく性質を併せ持つ。


配架とは


配架とは、商品が小売の売場の棚に置かれる状態を確保することである。どれだけ商品の中身が良くても、棚に並んでいなければ購入の対象にならないため、売上を左右する前提条件として扱われる。


期間限定商品とは


期間限定商品とは、販売する期間をあらかじめ区切って投入する商品のことである。常設の品ぞろえを増やさずに新しさを示せるため、定番品の存在を思い出してもらうきっかけとして使われる。


論点の背景


長く売れてきた商品の数字が落ちるとき、買う側に明確な不満が生まれているとは限りません。特に理由もないまま買う機会が減り、そのまま戻ってこない層が積み上がっていく形で数字は落ちます。不満が見つからないからこそ、原因の特定が遅れます。

 

この状況で提案されやすいのが、見た目の刷新です。手を打った感触が得られやすく、社内でも説明しやすいためです。ただし定番品の数字の低下で、見た目が主な原因になっている例は多くありません。むしろ作り替えに失敗すると、残っていた層まで離れることがあります。

 

取り戻すべきものは二つに絞られます。棚に置かれていて手に取りやすい状態と、もう一度手に取る理由です。前者は売場での扱いの問題であり、後者は買う側の関心の問題です。どちらが欠けているかを分けないまま施策を選ぶと、打ち手が噛み合いません。


令和6年の菓子の生産数量は前年を下回った一方で、生産金額と小売金額はともに前年を上回りました。数量が減りながら金額が伸びる状態は、買う回数が減っていても金額の面では見えにくいことを意味します。 出典:全日本菓子協会「令和6年 菓子の生産数量・生産金額等(推定)に係るコメント」(2026年4月1日)

実務での判断軸


1.不満が原因なのか、機会が減っただけなのかを分けているか。 調査で不満が見つからない場合、原因は品質ではなく接触の頻度にあります。この二つは打ち手がまったく違うため、見た目や中身の改良に進む前に、どちらであるかを確かめてください。

 

2.棚に置かれている状態を確保できているか。 売場での扱いが弱まると、中身に手を入れても購入にはつながりません。取り扱いの数や陳列の位置がどう変化してきたかを、売上の推移と重ねて確認する必要があります。

 

3.思い出してもらう理由を、定番品を壊さずに作れているか。 きっかけをつくる施策は有効ですが、常設の品ぞろえを増やし続けると収益の面で負担が大きくなります。定番品を維持したうえで、期間を区切った形で関心を戻す設計にしてください。


3つの順序を入れ替えないことが要点です。原因を分けてから売場を確かめ、最後にきっかけを設計します。見た目の刷新は、この順序を一通り確かめたあとに検討する選択肢になります。


編集部おすすめポイント


この掲載は設問の形をとっており、選択肢のどれが誤りかを一つずつ説明していきます。正解だけでなく、なぜ他の選択肢が最初の一手にならないのかが示されている点が特徴です。社内で施策の候補が並んだときに、落とす理由を説明する材料としても使える構成になっています。


悪魔の事典


書き出し


本編で読めること


ここでご紹介したのは、判断の枠組みにあたる部分です。本編では、次の問いに対する答えが示されています。


  • 不満が見つからない場合、原因の特定はどこから始めるのか

  • 見た目の刷新が最初の一手にならないのは、どういう理由か

  • きっかけをつくる施策は、どの程度の頻度までなら収益を損なわないのか

  • 宣伝の手法を変えることは、どの局面でなら有効なのか


本編は日経クロストレンドで公開されています。


よくあるご質問


Q.調査をしても不満が出てきません。次に何を調べるべきでしょうか。

A.買う頻度の変化を調べてください。不満がないまま買う機会だけが減っている層がどれだけいるかが分かると、打ち手の方向が定まります。品質の改良に進むのは、そのあとです。

 

Q.デザインの刷新を役員から指示されています。どう説明すればよいでしょうか。

A.刷新を否定するのではなく、順序の問題として説明してください。定番品の数字の低下で見た目が主因になっている例は多くなく、失敗した場合は残っている層まで離れます。原因の切り分けを先に行う時間を確保する提案が現実的です。

 

Q.期間を区切った商品を出し続けると、かえって定番品が弱りませんか。

A.その懸念は正しく、頻度の設計が要点になります。常設の品ぞろえを増やし続ける形は収益の負担が大きくなります。定番品を維持したうえで、一定の周期で区切って投入する形に留めてください。


執筆者

インサイトフォース編集部

ブランド戦略とマーケティング組織の設計を専門とする編集部が、掲載記事の論点を実務で使える形に整理しています。

掲載情報

媒体

日経クロストレンド

記事

ブランドの売り上げが下がったら最初にやるべきことは何か?

掲載形式

解説(連載)

公開範囲

無料公開範囲で本編を読めます


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