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ブランドコンセプトが成果につながらない理由|実装で崩れる3つの箇所

日経クロストレンドの連載にて、当社代表取締役・山口義宏による寄稿記事「何がブランドコンセプトを崩壊させるのか 成果を阻害する3つの落とし穴」が掲載されています。

ブランドコンセプトの質と、そのコンセプトが成果を生むかどうかは別の問題です。崩れるのは考えた段階ではなく、実装に移した後の3か所に集中します。


この記事の要点


  • ブランドコンセプトは立案の質ではなく、実装まで保たれるかどうかで成果が決まります。

  • 最も多い失敗は、社内での合意が得られず各部署の施策がばらばらになることです。

  • 顧客に届く最後の接点は、パッケージ、訴求シール、売り場の位置の3つに絞られます。

  • ブランド階層が多すぎると、顧客が覚えられずに認知と理解の獲得が進みません。


こんな方におすすめ


  • ブランドコンセプトを定めたのに、広告や売り場の訴求がそろわないと感じている方

  • コンセプトの合意形成に時間がかかり、施策の着手が遅れている事業部門の方

  • グループや事業の階層が増え、対外的な名乗り方が整理できていない経営層の方


前提となる3つの用語

クロスファンクショナルチームとは


クロスファンクショナルチームとは、部門をまたいで人を集めて構成する組織のことである。商品企画、広告宣伝、営業、デザインなど、後の工程で実行を担う部署を意思決定の段階から参加させる目的で組まれる。合意の形成を前倒しする手段として使われる。


ブランド体系とは


ブランド体系とは、グループ、企業、事業、商品、技術といった階層ごとにどのブランドを名乗り、どの接点でどれを掲げるかを定めた構造である。階層が増えるほど社内の管理は精緻になるが、顧客が覚える対象も増える。


ROIとは


ROIとは投下資本利益率のことで、投じた資本に対してどれだけの利益が得られたかを示す指標である。ブランドの取り組みでは、コンセプトの立案と検証にかけた費用に対して、その後の施策の成果がどれだけ改善したかを見る形で使われる。


論点の背景


コンセプトを丁寧に立案し検証することで投資の効率が高まる、という考え方は広く共有されています。ただし実務で起きているのは、立案の質が足りないという問題ではありません。見いだしたコンセプトが、実行の段階で別のものに置き換わっていく問題です。

 

置き換わりは悪意から起きるわけではありません。広告の担当者は反応の取れる訴求を選び、売り場の担当者は目立つ表現を選びます。それぞれの判断は担当範囲では正しく、結果として全体の一貫性だけが失われます。

 

名乗り方の問題も同じ構造で起きます。階層ごとにブランドを定義するルールは社内では筋が通っていても、顧客は同じ接点で3つも4つも名前を示されると覚えられません。覚える対象が増えるほど、投じた費用に対する認知の獲得は薄まります。


2024年の商標登録出願件数は158,792件で、前年から減少しています。一方で商標審査における登録査定率は88.4パーセントと前年から増加しており、名乗り方を新たに増やす選択そのものは容易な状態が続いています。 出典:特許庁「特許行政年次報告書2025年版」(2025年7月7日)

実務での判断軸


1.合意のコストを先に払っているか。 コンセプトを個人が見いだした段階でプレゼンをしても、後工程の部署の理解は得られません。実行を担う部署を意思決定の段階から巻き込み、合意にかかる負担を後ではなく先に払う設計にしておく必要があります。

 

2.パッケージ、シール、売り場の位置を検証しているか。 顧客に届く最後の接点は限られています。パッケージ案を複数用意して売り場を再現した環境で比べると、購入意向に大きな差が出ます。訴求シールも同様で、この検証を省くとコンセプトは顧客に到達しません。

 

3.顧客が覚えられる数まで階層を絞れているか。 同じ接点に複数のブランド名やロゴを並べると、認知は分散します。社内の管理上の必要と、顧客が記憶できる量は別に考え、接点ごとにどれを前面に出すかを1つに絞る判断が必要です。


3つのうち最初の2つは事業部門の判断で動かせます。階層の整理は本社側のルールに関わるため、担当者だけでは変えられません。経営層が関与する論点として、別に扱う必要があります。


編集部おすすめポイント


実装で崩れる話は、成功事例を紹介する記事にはほとんど出てきません。本編では、20年以上の支援経験から回避すべき箇所が具体的に示されています。自社のコンセプトがどの段階で止まっているかを判定する材料として読めます。


本編の続きで読めること


ここでご紹介したのは、判断の枠組みにあたる部分です。本編では、次の問いに対する答えが示されています。


  • 合意を先に取るとき、どの部署をどの段階で巻き込むのか

  • パッケージ案の検証では、どのような環境で比べると差が見えるのか

  • 売り場の位置は自社で決められないが、何をもって代替するのか

  • 階層が多すぎるブランド体系は、誰がどう整理していくのか

本編は日経クロストレンドの有料会員限定記事です。


よくある質問


Q.ブランドコンセプトの立案自体をやり直すべきでしょうか。

A.多くの場合、その必要はありません。問題が起きているのは立案ではなく実装の段階です。施策がばらばらになっている、最後の接点で訴求が変わっている、名乗る対象が多すぎる、のどれに当たるかを先に切り分けてください。

 

Q.部門をまたいだ合意形成に時間をかける余裕がありません。

A.後で払う負担と比べて判断してください。合意なしに進めると、広告や売り場で訴求が置き換わり、作り直しの費用と時間が発生します。着手前の調整は、そのやり直しの前払いに当たります。

 

Q.ブランド階層のルールは本社が決めており、現場では変えられません。

A.変えられない制約であることは前提です。そのうえで、認知や理解、購入の数値が階層の複雑さによってどれだけ損なわれているかを示す材料をそろえてください。経営層が判断する論点として持ち上げる以外に道はありません。



悪魔の事典


書き出し


執筆者

インサイトフォース編集部

ブランド戦略とマーケティング組織の設計を専門とする編集部が、掲載記事の論点を実務で使える形に整理しています。

掲載情報

媒体

日経クロストレンド

記事

何がブランドコンセプトを崩壊させるのか 成果を阻害する3つの落とし穴

掲載形式

寄稿(連載第11回)

公開範囲

日経クロストレンド有料会員限定


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