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ブランドの一貫性はどこまで守るべきか|ブランドガイドラインと訴求の二階建て設計

日経クロストレンドの連載にて、当社代表取締役・山口義宏による寄稿記事「ブランドの一貫性とビジネスに生じる矛盾 顧客接点で考える3つの防止策」が掲載されています。

ブランドを浸透させるには全ての接点で一貫性を保つ、というのが原則です。しかし実際の取引は、複数の顧客層と複数の価値が混ざった状態で成り立っています。この矛盾が現場の混乱を生みます。


この記事の要点


  • 一貫性の原則と、複数の顧客層に向けた訴求の必要性は現場で衝突します。

  • 接触時間が長い接点では包括した概念を伝え、短い接点では絞った訴求に切り替えます。

  • 短い接点に抽象的な表現を載せると、転換率が落ちて獲得の費用が上がります。

  • 事業規模が小さいうちは、広告費を認知の浸透ではなく顧客の獲得に投じます。


こんな方におすすめ


  • ブランドガイドラインの遵守と広告の成果の間で板挟みになっている担当の方

  • 複数の顧客層に向けた訴求を、一貫性を保ちながら設計したい方

  • 事業規模がまだ小さい段階で、ブランドへの投資時期を判断したい経営層の方


前提となる3つの用語


トーンオブボイスとは


トーンオブボイスとは、ブランドが発する言葉づかいや語り口の性格づけである。何を言うかではなく、どのような口調と態度で伝えるかを定めることで、接点が変わっても同じブランドとして受け取られるようにする。


ブランドパーソナリティとは


ブランドパーソナリティとは、そのブランドが人であればどのような性格かという捉え方である。顧客が抱く人格の印象を設計の対象に置くことで、表現の判断に一貫した基準を与える目的で使われる。


UGCとは


UGCとは、企業ではなく利用者側が作り出した投稿や写真、感想などの内容である。広告費を大きく投じられない段階でも、報道や口伝えと合わせて認知を広げる手段になるため、小規模な事業では優先度が上がる。


論点の背景


人はブランドに複数回触れたとき、印象の一貫性の有無によって記憶の定着度合いが変わります。そのため全ての顧客接点で一貫性を保つことが有効になります。これは多くのブランド論に共通する原則です。

 

一方で現実の取引は、1つの顧客層が1つの価値を感じて買うという単純な形をしていません。必ず複数の顧客層と複数の価値が併存しています。ここで一貫性という原則と、層ごとの訴求という必要性が衝突します。

 

衝突の解き方は、接点を接触時間の長さで分けることです。対面の営業や長尺の動画のように時間をかけられる接点では、全体を包括した概念を先に伝えます。短い接点では特定の層と価値に絞り、複数の訴求を並べて運用します。


2025年のインターネット広告費は4兆459億円で構成比50.2パーセントとなり、初めて過半に達しました。短時間の接点が広告投資の主戦場になったことで、抽象的な表現をそのまま載せる設計の不利は大きくなっています。 出典:電通「2025年 日本の広告費」(2026年3月5日)

実務での判断軸


1.接点の長さに応じて抽象度を変えているか。 新規顧客の獲得を目的とした短い接点に、全体を包括した抽象的な概念を載せると価値が伝わりません。理解も共感も得られないため転換率が下がり、獲得の費用が高く付きます。接点ごとに抽象度を設計し直す必要があります。

 

2.事業規模が広告投資の段階に来ているか。 認知の浸透を目的とした広告が経済的に成り立つのは、ブランドを知らないと買わない層を取らなければ伸びない規模に達してからです。その手前の段階で浸透を狙う大きな投資は、多くの場合で筋が悪くなります。

 

3.掲げた理念が競争優位につながる設計か。 使命や目指す姿は聞こえの良い言葉ですが、長期にわたって追求することが競争優位につながるかを自問する必要があります。経済的な見返りが期待できない理念は、投資の持続性を持ちません。


小規模な段階でも打てる手はあります。報道での露出、利用者による投稿、口伝えの増加を狙う取り組みや、大きな広告費を伴わない研究開発は、規模が小さいうちから積み上げる価値があります。


編集部おすすめポイント


一貫性を守るべきという原則と、現場で起きている矛盾を同時に扱った記事は少ないです。本編では、ロングセラーブランドが数字と施策の推移をたどりながら維持してきた過程が扱われており、原則と現実の折り合いの付け方が読み取れます。


悪魔の事典


ここから書き始め


本編の続きで読めること


ここでご紹介したのは、判断の枠組みにあたる部分です。本編では、次の問いに対する答えが示されています。


  • 二階建ての構造は、具体的にどの接点でどう組むのか

  • 抽象的な訴求で転換率が落ちる仕組みは、どこに原因があるのか

  • 広告投資が成り立つ事業規模の目安は、どのあたりに置かれるのか

  • 価値の陳腐化への適応と一貫性は、どう両立させるのか

本編は日経クロストレンドの有料会員限定記事です。


よくある質問


Q.ガイドラインを緩めると、ブランドがばらばらになりませんか。

A.緩めるのではなく、守る対象を絞ります。包括した概念として維持すべき部分は最小限にとどめ、接点ごとの表現には裁量を残す形です。全てを固定する運用は、施策の成果を下げる側に働きます。

 

Q.小規模な段階では、ブランドに何も投資しないほうがよいのでしょうか。

A.投資しないという意味ではありません。広告費を認知の浸透に投じる時期ではない、という判断です。報道での露出、利用者の投稿、口伝えを増やす取り組みは、規模が小さいうちから積み上がる資産になります。

 

Q.複数の顧客層に向けた訴求は、それぞれ別に作るのでしょうか。

A.短い接点では、特定の層と価値に絞った訴求を複数並べて運用します。1つの表現で全ての層に効かせようとすると、抽象度が上がって誰にも届きません。並列で展開し、層ごとの反応を見て配分を変える形が現実的です。


執筆者

インサイトフォース編集部

ブランド戦略とマーケティング組織の設計を専門とする編集部が、掲載記事の論点を実務で使える形に整理しています。


掲載情報

媒体

日経クロストレンド

記事

ブランドの一貫性とビジネスに生じる矛盾 顧客接点で考える3つの防止策

掲載形式

寄稿

公開範囲

日経クロストレンド有料会員限定


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