どんな会社にもブランド戦略が必要な理由|3つの誤解を解く
MarkeZineにて、当社代表取締役・山口義宏の著書『デジタル時代の基礎知識「ブランディング」』の冒頭が抜粋のうえ掲載されています。
ブランド戦略という言葉を出すと、うちには関係ないという反応が返ってくることがあります。その反応の背後には、決まった形の誤解があります。誤解を解くと、必要な投資の見積もりがまったく変わります。
この記事の要点
ブランドは、買う側が選択肢を絞り込むための仕組みとして日常的に働いています。
ブランド戦略は新しい費用を足す話ではなく、既存の接点の印象をそろえる作業です。
安さを掲げる企業にもブランド戦略は成立します。高級品に限った話ではありません。
大きな広告費がなくても、規模に見合った手段の組み合わせで成り立ちます。
こんな方におすすめ
ブランド戦略は自社には関係ないと社内で言われ、説明に困っている担当の方
広告予算が限られており、何から着手すべきか判断できていない中小企業の方
過去の企業理念づくりが成果につながらず、慎重になっている経営層の方
前提となる3つの用語
UXとは
UXとは、利用者が製品やサービスに触れる過程で得る体験の全体を指す言葉である。購入する前の情報収集から、使っている最中、使い終わったあとの印象までを含み、接点が増えるほど設計すべき範囲も広がる。
サードプレイスとは
サードプレイスとは、自宅でも職場でもない、その人がくつろいで過ごせる第三の居場所のことである。商業施設の設計では、席の効率よりも滞在の心地よさを優先する判断の根拠として使われる。
DCブランドとは
DCブランドとは、1980年代の日本で広まった、デザイナーの名前やその感性を前面に出した衣料品のブランド群を指す言葉である。この時期の流行によって、ブランドという語が高級な衣料品と結びつけて受け止められる素地ができた。
論点の背景
私たちは一日のうちに数多くのブランドに触れています。もしブランドの表示が一切ない売場を想像すると、飲み物を一本選ぶことすら難しくなります。どれがどんな味で、何が違うのかを、その場で一から調べる必要が出るためです。
つまりブランドは、買う側にとって判断の手間を省く仕組みとして働いています。売る側から見れば 、他よりも良い認識を持ってもらえていれば選ばれる確率が上がるということです。この機能は、価格帯にも業種にも関係なく働きます。
それでも関係ないという反応が出るのは、言葉が日本に入ってきた時期の事情が影響しています。高級な衣料品と結びつけて受け止められたこと、そして理念を定めるだけで成果につながらなかった経験が重なり、疑いを持つ企業が残りました。
日本マーケティング協会は2024年1月に、34年ぶりにマーケティングの定義を刷新しました。顧客や社会との関係を軸に据えた定義へと改められており、売るための手法という理解から、関係の設計という理解へ重心が移りつつあることを示しています。 出典:日本マーケティング協会「34年振りにマーケティングの定義を刷新」(2024年1月25日)
実務での判断軸
1.新しい費用ではなく、既存の接点をそろえる作業として見ているか。 ブランド戦略の中身の多くは、商品、広告、営業、接客が与えている印象をそろえることです。大きな追加予算が前提ではなく、社内の調整にかかる手間が主な負担になります。
2.価格帯を理由に検討から外していないか。 安さを掲げて成功している企業も、いつ行っても安いという認識を築いています。これも立派なブランドの働きです。高級であることは条件ではありません。
3.規模に見合った手段を選べているか。 全国に知らせる必要がない企業が、全国に届ける手段を前提にして諦めている例が多く見られます。必要な売上の規模から逆算すれば、取り得る手段はもっと限られた範囲で足ります。
3つの誤解はいずれも、ブランド戦略を大きな広告と同じものとして捉えることから生まれています。捉え方を改めると、自社の規模で取れる手段が見えてきます。
編集部おすすめポイント
この掲載は書籍の冒頭部分の抜粋で、ブランド戦略に踏み出す前の障害を一つずつ取り除く構成になっています。社内で説明に行き詰まったときに、そのまま共有できる形で論点が並んでいる点が実務的です。反対している相手がどの誤解を持っているかを特定する材料としても使えます。
悪魔の事典
書き出し
本編で読めること
ここでご紹介したのは、判断の枠組みにあたる部分です。本編では、次の問いに対する答えが示されています。
誤解を持っている相手に、どの順序で説明していくのか
既存の接点の印象をそろえる作業は、具体的に何から始めるのか
広告を使わずにブランドを築いた企業は、何に投資しているのか
小さな企業が選ぶべき手段の組み合わせはどうなるのか
本編はMarkeZineで公開されています。
よくある質問
Q.うちは高級品を扱っていません。それでもブランド戦略は必要でしょうか。
A.必要です。安さを掲げて成功している企業も、いつ行っても安いという認識を顧客に築いています。価格の高低ではなく、選ばれる理由を一貫して伝えられているかどうかが要点です。
Q.追加の予算が取れません。何から始められますか。
A.既存の接点を並べて、それぞれが与えている印象を確かめるところから始めてください。商品、広告、営業、接客がばらばらの印象を与えていないかを見ます。この作業の主な負担は費用ではなく、社内の調整にかかる手間です。
Q.以前に企業理念を定めましたが、成果につながりませんでした。
A.理念を定めること自体と、競争力を高めることは別の作業です。定めた理念が日々のどの判断で使われるのかが決まっていないと、成果には結びつきません。使う場面を先に決めてから、内容を見直してください。
執筆者
インサイトフォース編集部 | ブランド戦略とマーケティング組織の設計を専門とする編集部が、掲載記事の論点を実務で使える形に整理しています。 |
掲載情報
媒体 | MarkeZine |
記事 | なぜあらゆる企業にブランディングが必要なのか? ブランド戦略の全体像を解説した1冊 |
掲載形式 | 書籍からの抜粋掲載 |
公開範囲 | 無料 |
